夏空ひまわり2024

金沢の方へ出かけていた時のこと。昼食の店をどこにしようかとGoogleマップを見ていて、たまたま「ひまわり村」の文字を見つけた。その日は7月27日。サイトにアクセスすると、開花時期は7月下旬から8月上旬と書かれている。現在地からも遠くない。せっかくちょうどの時期に偶然見つけたひまわり畑。足を運んでみた。
そこは河北潟干拓土地改良区ひまわり村(1~4枚目)。金沢の中心から見て北東、能登半島へと向かう「のと里山海道」の入口方向に位置する河北郡津幡町にあった。2024年1月の能登半島地震による道路破損があり、迂回を経て辿り着いたひまわり畑。そこに35万本のひまわりが咲き誇る様は、本当に見事としか言いようがない。ハイブリッドサンフラワーNEOという種類のこの花、毎年地元の保育園児たちが種まきをしているそうだ。
その10日後くらいの8月上旬。今度は毎夏必ず見に行っている滋賀県守山市・第一なぎさ公園のひまわり畑(5~6枚目)へ。綺麗ではあったもののぐったりした花が目立ち、若干遅かったかなという感が・・・。
でも、琵琶湖沿いをさらに北へとクルマを走らせていると、また偶然ひまわり畑が!
そこは近江八幡市大中(だいなか)の大中グリーン工房という野菜や果物の直売所に併設のひまわり畑だ(7枚目以降)。直売所は日曜のみオープンのようだが、ひまわり畑には他の曜日でも入ることができる。また、キッチンカーが出店していてかき氷や冷たい飲み物とともにひまわりを楽しむことができた。
こちらのひまわりは2m超えで背が高く、少し見上げる感じになって青空によく映える。まったく知らなかった場所だけども、キッチンカーのスタッフの方にお尋ねしたところ、ここも毎年見られるそう。平日ながら大型バスも何台かやってきて賑わっていた守山第一なぎさ公園(ひまわり畑すぐ隣の駐車場も利用できなくなっていて琵琶湖マリオットホテル第2駐車場を利用する形になっていたのが来場者の増加を物語る)に比べて静かで、かつ、すいかやとうもろこしなどの直売所があるこのエリアはまわりの景色がとてものどか。屋根のあるスペースにチェアが用意されていて、キッチンカーで買った冷たいものとともにゆっくりひまわりを楽しめる。夏好き、ひまわり好きにとっては至福の場所だ。しっかりと記憶しておき、来年また訪れたいなと思った。

>> 夏空ひまわり2021

砂丘の空を漂う海月

遠州灘沿いに東西約4km広がる中田島砂丘。アカウミガメの産卵地としても知られる。遠州大砂丘の一部を成し、日本三大砂丘のひとつに数えられるほどの砂丘ながら(三大砂丘については諸説あるらしいが)、鳥取砂丘のようにラクダがいるわけでもなく、リフトがあるわけでもなく、おみやげ物屋すらひとつもない(少し離れて浜松まつり会館という建物がありそこには売店が存在するが、砂丘を紹介する施設ではない)。その入口付近に「中田島砂丘」の名が石に刻まれているだけで観光地らしい感じはあまりなく、ただそこに自然な姿で砂丘がある。

そんな中田島砂丘の近くで用事があった日に1時間ほど空き時間ができ、砂丘近くの風車公園にクルマを停めて砂丘の方へと歩いてみた。鳥取砂丘ほどの広さはないものの、南北の距離は0.6km。砂地の上を波打ち際まで歩いて帰ってくるほどの時間はなかったので、せめて海が見えるところまで行ってみることにした。

何も遮るものなく砂丘を目にすると、空も広い。その広い広い空に、この日は雲が美しい。1枚シャッターを切って液晶を見ると、くらげのような、タンポポの綿毛のような・・・そんな風に見えた。
クラゲ雲なんて名前があるのかどうかはわからないけど、広い空を漂う様子は、さながらクラゲ。本当は巻雲・・・かな?尾流雲?
丘の上まで辿り着くと海が見える。波打ち際で小さな子がはしゃぐ声が微かに聞こえる。そこまで行きたかったけれどそれはあきらめ、そんな雲の移ろいをしばらく眺めていた。

天空のテラス三昧 三方五湖

福井県の嶺南・美方町と若狭町にまたがる五つの湖・三方五湖(みかたごこ)。
若狭湾国定公園内にある三方湖・水月湖・菅湖・久々子湖・日向湖の五湖のことで、最大の水月湖でも周囲10.8kmと、小さな湖がぎゅっと寄り集まっている。隣接して密集する湖ながらに、三方湖は淡水で日向湖(ひるがこ)は海水、あとの3つは汽水湖と性質が異なる。ラムサール条約にも登録されており、三方湖畔には水鳥を観察できる施設もある。

そんな三方五湖の周囲には、「レインボーライン」というドライブコースがあり、さらにその途中のレインボーライン山頂公園からは五つの湖と若狭湾が一望できる(レインボーラインは無料、山頂公園および駐車場は有料)。
駐車所から並走するリフトとケーブルカーのいずれかに乗り(どちらに乗っていもかまわない)山頂に辿り着くと大パノラマが広がっているのだが、この山頂公園、その大パノラマを楽しめるテラスがいくつも用意されている。
そのうちのひとつ「美浜テラス」には足湯まで設置されており、湯に足を浸しながら絶景を楽しむことができる。
入り組んだ五湖と若狭湾を望むスポットだけにテラスごとに景色が違うので、まずはそれぞれのテラスを巡ってみて、そして自分のお気に入りテラスでのんびり・・・そんな過ごし方をしていると、思っていた以上の時間が過ぎていた。
駆け足で回らず、ゆっくりのんびりを楽しみたい場所だ。

>> 三方五湖 レインボーライン

おおかみこどもの雨と雪 花の家

細田守監督によるアニメーション映画「おおかみこどもの雨と雪」。その舞台となった家は、モデルが実在している。それがここ、細田監督の出身地でもある富山県中新川郡上市(かみいち)町の古民家・おおかみこどもの花の家

じつは、もともと知っていて訪れたのではなく、ここの存在は現地・上市町に入ってから知った。この日は、立山連峰の中でも特に荒々しい姿を見せる剱岳をゆっくりと眺めたくて上市を目指した。ところが、青空が広がる好天ながら立山連峰には雲がかかっていて、剱岳が見えない。それで、さてどうしたものかとネットや地元の案内板などで情報収集していたところ、この家の存在を知った。地図で見たところ市街地からはだいぶん離れた場所だったが、ほかに目的もないので行ってみることにした。

Googleマップのルート案内が示すキロ数以上の距離を感じつつ、細い山道を通り抜けようやく小さな看板があらわれたのでクルマを停めた。あきらかに空気感が違う。匂いや温度、五感を通して伝わってくるもののすべてが何か先ほどまでいた上市の市街地とは違う感じがした。
そこからほんの少し歩くと・・・あった。確かに、映画で見たままの古民家がそこにあった。外観を眺めるだけではなく、家の中にも入れるようになっている。中に入ってみると、作品にまつわるものがいろいろと展示されている。
ちょうど他に誰もいなかったこともあり、何かちょっと現実とは違う異世界に来たような感じすら漂う中、映画のシーンに思いを馳せた。

>> おおかみこどもの花の家 (富山県上市町)

あさひ舟川 春の四重奏

残雪の雪山を背景に、舟川べりの桜並木とチューリップ、そして菜の花が四重奏を織りなすことで知られる富山県朝日町の「春の四重奏」。
観光PRのポスターなどで知り、一度この目で見てみたいと思いつつも、なにぶんごく限られた時期だけの風景のためなかなか機会がなかったのだが、2023年、3月末に休みが取れた。しかも、この四重奏が見られる朝日町は富山県の中でも新潟県の県境に近い最東部なので、平年並みならば3月末に桜はまだ咲いていないのだが、2023年は全国各地で記録的早さで桜が開花している。
休みと桜の早期開花。せっかく条件が重なったので、いよいよ赴いてみることにした。

が・・・やはり自然が相手なので、その四者がピッタリ揃う風景を見るというのはなかなか難しいもの。確かに桜は咲いており、背景にそびえる朝日岳や白馬岳の雪山は雄大だったものの、チューリップと菜の花がまだ早かった。わずかにチューリップが咲いている場所で三重奏までは奏でてくれていたのだが、カルテットを目にすることはできなかった。

それでも、見事だ。
田植え時期でもないのに、リフレクションが楽しめるようにと農家さんが張ってくださっていた水に雪山と桜が映える。そして夕暮れ時、白い雪をスクリーンに夕陽が山を夕焼け色に染め始めた。

みなべ千里の浜 夕陽と蜃気楼

この日の朝は本州最南端の町・串本にいた。天気予報では晴れのはず・・・だった。朝早くのうちは確かに晴れていたが、10時を過ぎることには一面の曇天。大島や潮岬を巡るも、どうもパッとしない。ネットで天気を見ていると、北のほうがまだマシのようだ。それで、午後の早めの時間に串本をあきらめ、北へとクルマを走らせる。

すさみ、白浜、田辺と走るが、空は曇天・・・だったのだが、みなべに入ったあたりで陽が射してきた。雲が綺麗に切れているのが見える。あの雲の切れ間はちょうど、本州有数のアカウミガメ産卵地として知られる千里の浜だ。曇天に覆われていた一日の終わり、ここで陽の沈むのを眺めようと決め、クルマを止めて海岸に降りた。
一年前の夏に来た時はちょうど干潮だったのか岩場を歩けていろいろな魚の姿を見られたのを思い出し、そちらの方をめざすも今は満潮のようで磯の姿はなく、砂浜で寄せたは返す波を眺めていると・・・水平線に、どうも違和感のある影が見える。しかも、水面から浮いている!これはきっと蜃気楼だ。持っていた一眼レフカメラのレンズを望遠に変えて撮ってみた。蜃気楼であろうことはわかるのだが、最初、正体が何なのかわからなかった。建物っぽいけれど、写真で見たことのある魚津の蜃気楼とはちょっと違う。一体何だろうと思い何枚か撮っているうちに、ようやく船の姿に見えてきた。

幻のような船が元の姿になった頃、陽は随分と傾いて、美しい夕陽を見せてくれた。曇天にがっかりした一日だったけれど、最後に思いもよらぬ奇跡の風景に出会えた。

佐久島 イーストハウスと島東部

 

>> 佐久島 おひるねハウスと島西部 から続く

島西部のおひるねハウスと対を成すような存在なのが、東部にあるイーストハウス。おひるねハウスが黒だったのに対し、イーストハウスは眩しいほどの真っ白だ。青い空にとても映える。
イーストハウスは、その南に位置する大島へと続く桟橋の途中にあるのだが、この周辺の海はとても透明度が高い。その透明な海の中を大島へと続く電柱が並ぶ風景は、ちょっと『千と千尋の神隠し』の世界を思い出させる。

おひるねハウスとイーストハウス以外にも様々なアート作品あふれる佐久島だが、そのふたつのハウスの中間あたり、大浦海岸のカモメの駐車場もまた海に映える作品だ。この写真ではみんな向かって右を向いているが、風でクルクルと回るので、風向きによってカモメの向きも変わる。

西港、東港、それぞれの港にあるレンタサイクルを使えば一日でぐるっと見て回れるくらいの広さ。信号機もコンビニもない島で、ゆっくりと流れる島時間を楽しんだ。

佐久島 おひるねハウスと島西部

知多半島と渥美半島の間、三河湾に浮かぶ日間賀島、篠島、佐久島。
そのひとつ佐久島は「アートの島」として知られ、島内に様々なアート作品が並ぶ。そんな佐久島アートを代表する作品のひとつが、島の西部にあるおひるねハウスだ。
佐久島は愛知県西尾市一色港と船で結ばれており、西港と東港のふたつの港があるが、おひるねハウスは西港から歩いて10分ほど。彼岸花咲く道を通り抜け、辿り着いた。黒い箱が9つの“部屋”に仕切られており、そのひとつに入ってただ静かに海を眺めて潮騒に耳を傾けるだけの時間。心が整ってくるのを感じる。
アートだけでなく古い町並みも魅力で、島の西側には黒壁の家が並ぶ。おひるねハウスの黒はこの黒壁がモチーフだ。
島西部を歩いていると、初めて来たのにどこかで見たことのあるような気がする古民家を見つけた。動物写真家の岩合光昭さんが監督された映画『ねことじいちゃん』のロケ地だった。

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亀岡平和祭 保津川市民花火大会2022

2019年を最後に、大会中止が続いてきた各地の花火。ようやく2022年はいくつかの花火大会が3年ぶりに開催されている。
そんな中のひとつが京都府・亀岡市の亀岡平和祭 保津川市民花火大会
この亀岡花火大会は「平和祭」の名前が示す通り平和を祈念するため1952年に始まった歴史ある花火大会で、亀岡駅がJR嵯峨野線で京都駅から30分程度、嵯峨嵐山駅からならば10分というロケーションゆえ、京都市内からもたくさんの観覧客が訪れる。

約1万発の花火がうちあげられるびわ湖花火大会や、亀岡から3駅しか離れていない京都南丹市花火大会は2022年も中止が決まっている中、亀岡では8千発の花火が夜空を彩った。
少し離れたところから見ていたので、花火がガレリアかめおかの向こう側の夜空を染めた数秒後にドンという低い音が聴こえ、体に響く。夏好きとしては、やはりこの響きを体に感じずには夏を終えられない。

志摩 的矢湾の夜明け

さまざまな形の島や半島が複雑な海岸線をつくるリアス海岸の地形が美しい志摩半島。その東側に、細長く入り組んだ的矢(まとや)湾がある。カキの養殖でよく知られており、湾に面して志摩スペイン村がある。

そんな的矢湾沿いの宿に泊まった時のこと。
ちょうど夜が明ける頃に目が覚めた。宿の窓から的矢湾を眺めると、瑠璃色の空に水平線沿いが暁色になり始めていた。ほんのわずかな間に、東雲色から曙色へとグラデーションに移り変わっていく。まだ少し眠かったけれど、もう目が離せない。
わずかな間に、一瞬だけ見せては変わっていくさまざまな色。
明るさが増してくると、波のおだやかな湾の水面も空の色を対称に映して色を変えていく。

そうしてすっかり明けきった空は、真っ青な夏空になっていた。