砂丘の空を漂う海月

遠州灘沿いに東西約4km広がる中田島砂丘。アカウミガメの産卵地としても知られる。遠州大砂丘の一部を成し、日本三大砂丘のひとつに数えられるほどの砂丘ながら(三大砂丘については諸説あるらしいが)、鳥取砂丘のようにラクダがいるわけでもなく、リフトがあるわけでもなく、おみやげ物屋すらひとつもない(少し離れて浜松まつり会館という建物がありそこには売店が存在するが、砂丘を紹介する施設ではない)。その入口付近に「中田島砂丘」の名が石に刻まれているだけで観光地らしい感じはあまりなく、ただそこに自然な姿で砂丘がある。

そんな中田島砂丘の近くで用事があった日に1時間ほど空き時間ができ、砂丘近くの風車公園にクルマを停めて砂丘の方へと歩いてみた。鳥取砂丘ほどの広さはないものの、南北の距離は0.6km。砂地の上を波打ち際まで歩いて帰ってくるほどの時間はなかったので、せめて海が見えるところまで行ってみることにした。

何も遮るものなく砂丘を目にすると、空も広い。その広い広い空に、この日は雲が美しい。1枚シャッターを切って液晶を見ると、くらげのような、タンポポの綿毛のような・・・そんな風に見えた。
クラゲ雲なんて名前があるのかどうかはわからないけど、広い空を漂う様子は、さながらクラゲ。本当は巻雲・・・かな?尾流雲?
丘の上まで辿り着くと海が見える。波打ち際で小さな子がはしゃぐ声が微かに聞こえる。そこまで行きたかったけれどそれはあきらめ、そんな雲の移ろいをしばらく眺めていた。

おおかみこどもの雨と雪 花の家

細田守監督によるアニメーション映画「おおかみこどもの雨と雪」。その舞台となった家は、モデルが実在している。それがここ、細田監督の出身地でもある富山県中新川郡上市(かみいち)町の古民家・おおかみこどもの花の家

じつは、もともと知っていて訪れたのではなく、ここの存在は現地・上市町に入ってから知った。この日は、立山連峰の中でも特に荒々しい姿を見せる剱岳をゆっくりと眺めたくて上市を目指した。ところが、青空が広がる好天ながら立山連峰には雲がかかっていて、剱岳が見えない。それで、さてどうしたものかとネットや地元の案内板などで情報収集していたところ、この家の存在を知った。地図で見たところ市街地からはだいぶん離れた場所だったが、ほかに目的もないので行ってみることにした。

Googleマップのルート案内が示すキロ数以上の距離を感じつつ、細い山道を通り抜けようやく小さな看板があらわれたのでクルマを停めた。あきらかに空気感が違う。匂いや温度、五感を通して伝わってくるもののすべてが何か先ほどまでいた上市の市街地とは違う感じがした。
そこからほんの少し歩くと・・・あった。確かに、映画で見たままの古民家がそこにあった。外観を眺めるだけではなく、家の中にも入れるようになっている。中に入ってみると、作品にまつわるものがいろいろと展示されている。
ちょうど他に誰もいなかったこともあり、何かちょっと現実とは違う異世界に来たような感じすら漂う中、映画のシーンに思いを馳せた。

>> おおかみこどもの花の家 (富山県上市町)

あさひ舟川 春の四重奏

残雪の雪山を背景に、舟川べりの桜並木とチューリップ、そして菜の花が四重奏を織りなすことで知られる富山県朝日町の「春の四重奏」。
観光PRのポスターなどで知り、一度この目で見てみたいと思いつつも、なにぶんごく限られた時期だけの風景のためなかなか機会がなかったのだが、2023年、3月末に休みが取れた。しかも、この四重奏が見られる朝日町は富山県の中でも新潟県の県境に近い最東部なので、平年並みならば3月末に桜はまだ咲いていないのだが、2023年は全国各地で記録的早さで桜が開花している。
休みと桜の早期開花。せっかく条件が重なったので、いよいよ赴いてみることにした。

が・・・やはり自然が相手なので、その四者がピッタリ揃う風景を見るというのはなかなか難しいもの。確かに桜は咲いており、背景にそびえる朝日岳や白馬岳の雪山は雄大だったものの、チューリップと菜の花がまだ早かった。わずかにチューリップが咲いている場所で三重奏までは奏でてくれていたのだが、カルテットを目にすることはできなかった。

それでも、見事だ。
田植え時期でもないのに、リフレクションが楽しめるようにと農家さんが張ってくださっていた水に雪山と桜が映える。そして夕暮れ時、白い雪をスクリーンに夕陽が山を夕焼け色に染め始めた。

京丹後袖志の棚田 夕景

京丹後市丹後町袖志。京都府の最北端であり、かつ近畿地方の最北端でもある経ヶ岬を含む地域で、京都縦貫道からも離れているため京都府の中でも京都市内から最も“遠い”場所と言える。
そんな袖志の海岸段丘には日本の棚田百選にも選ばれている棚田が広がっている。棚田越しには日本海。田んぼに水が入ってすぐの頃は棚田から海へインフィニティのような風景になる。
また、段丘から西の方角の海が見えるので、棚田越しの水平線に夕陽が沈むのを見ることができる。
天橋立、立岩、屏風岩など丹後半島には絶景ポイントが多いが、棚田から海へのインフィニティ、そして水を湛えた田んぼに夕空が鏡面反射する風景は、絶景中の絶景だ。

近隣の絶景ポイント
美しき柱状節理 立岩と虹色の波